口づけの蹉跌

2
2

 大学二年の冬休み。男友達二人とスノーボードにいった。同じ宿の女子三人組と意気投合し、僕らの部屋で飲み直す。
 夜も更けた頃、並んで座った女の子が「潮時かなと思ってる」と呟いた。辛い恋をしているそうだ。「君に彼女は?」。そう問われ「二つ下の受験生。全然会ってもらえない」と苦笑した。そこで短い沈黙があり、僕らはどちらからともなく唇を重ねた。
 互いを慈しむようなキスだったけど、何だか後ろめたく、「お土産渡す」と口実つけて彼女を呼び出した。僕が打ち明けると、彼女はぽろぽろ涙をこぼす。予想外の反応だった。「帰る」。何度詫びても頑なで、僕はつい声を荒らげてしまう。
 「お前を好きで、隠し事したくないんだ」
 目を赤く腫らした彼女が睨む。
 「違うよ先輩。黙っているの、あなたが苦しいからだよ。私を好きだなんて理由はずるい」
 その時、僕は思い出す。自分は弱い人間で、だから勝気な彼女に惹かれたのだと。
恋愛
公開:20/12/13 02:18
更新:20/12/13 18:34

掌編小説( 首都圏 )

Twitterで掌編小説を書いています。本業は別ジャンルの物書きです。好物はうまい棒とダイエットドクターペッパー。
フォロワーさんに「ショートショートガーデン」を教えていただきました。どうぞよろしくお願いします。
Twitter(https://twitter.com/l3osQbTDUSKbInn)は毎日更新しています。
イラストはミカスケさん(https://twitter.com/oekakimikasuke)やノーコピーライトガールさん(https://twitter.com/nocopyrightgirl)の作品です。写真はフリー素材を利用させていただいています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容