主役は僕だ!

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12月。
くりすます、というお祭りの準備で賑わう街だけど、僕は、その片隅に置かれている他のものに目を奪われている。
「むふふ」
「おい、気持ち悪い笑い方すんなよ」
「仕方ないだろ。それに、君だって、去年はこんな感じで笑ってたよ」
「俺はそんなことしねーもん」
僕の頭の上でチューチューと文句を言う彼は、少し拗ねている。それも仕方ない。だって、もうすぐ彼は主役ではなくなるのだから。
「わ、ほら見て!こっちにも僕の絵がいっぱいだぁ。あっちには置物もあるよ」
「見たって楽しくねーよそんなもん。さっさと帰ろうぜ。神様にまーた怒られちまう」
「もうちょっとだけ、ね」
「けっ、どうせ再来年になりゃまた主役から降ろされるってのに呑気なこった」
「来年になってないのに、再来年の話なんてしないでおくれよ」
「うっせぇ!早く帰んぞ!」
お前は歩くのおせーんだから、と言われて、僕は名残惜しく天へと帰って行った。
その他
公開:20/12/11 14:41

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