上品下品

　オンボロの軽で、パパとドライブ。路地の十字路で、一旦停止。

　右から、いかにもお金持ちな、ざ～ます系の貴金属ギラギラおばさんが、息子に高級な子供服を着せて歩いて来た。

　パパは笑顔で、｢どうぞ♪｣と、右手でそっと道を譲った。

　その親子は、｢フンッ！｣、とばかりに通り過ぎた。

　左には、古着を着た母子が、私たちに笑顔で道を譲ってくれていた。パパも笑顔を返し、｢どうぞ♪｣と、右手を左から右へ。

　その親子は、笑顔でこちらに会釈をしながら、通り過ぎて行ってくれた。

｢パパね、お金儲けは下手だけど、上品には生きたいと思ってるんだ……｣

　パパの自信を垣間見た。

｢ねぇ、パパ｣
｢ん？｣
｢上品に生きるって、難しい？｣
｢どうだろうね｣
｢とりあえず、ズボンのチャック！｣
｢ん、えっ？！　あっ、こりゃおめぇ～、密を避けるための換気だよ♪｣
｢さ、雨ん中、駅で待ってるよ、ママ♪｣