坂の思い出
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その坂は桜で満開たった。
坂を上りきると、そこには総合病院がある。かつて母はその病院の厨房で働いていた。
肥えた体で学のない母は、回りからよく罵声を浴びていたらしい。それでも病院に通い続けたのは、息子だけには学をつけさせたいという母心からだったのだろう。
「ああ、あと何回この桜を見れば、おまえは学校を卒業するんだろうって、母さんいつもあの坂を上ってはそう思ってたんだよ」
生前に母がよくこぼしていた言葉だった。
穏やかな春風に吹かれ、坂の桜は今も変わらず辺り一面を鮮やかに彩っている。
坂を上りきると、そこには総合病院がある。かつて母はその病院の厨房で働いていた。
肥えた体で学のない母は、回りからよく罵声を浴びていたらしい。それでも病院に通い続けたのは、息子だけには学をつけさせたいという母心からだったのだろう。
「ああ、あと何回この桜を見れば、おまえは学校を卒業するんだろうって、母さんいつもあの坂を上ってはそう思ってたんだよ」
生前に母がよくこぼしていた言葉だった。
穏やかな春風に吹かれ、坂の桜は今も変わらず辺り一面を鮮やかに彩っている。
その他
公開:20/12/11 07:25
更新:21/01/27 07:58
更新:21/01/27 07:58
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