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例えば、この側溝蓋の穴の道は僕にしか見えない特別な「導き」だったら。そしたら、ずっとずっと日常は素敵だ。

例えば、農業機械で整えられたこのふかふかの畑一面が僕のための特別なお布団だったら。そしたら、ずっとずっと夜は「始まり」だ。

そんな始まりの夜を考える。

広大なお布団に寝転がり空を仰ぐ。
これから始まる夜に、映画が始まる前の高揚を思い出す。
遠い遠い時間の果てに届く、星の光。感傷で息を止める。その時間の全てを知ることが出来たなら、きっと人生を満足させてしまえる。でも僕はまだ何も知らないから、そっと息を吸うんだ。
誰にも知られない僕のこの時間も誰かからすれば「知らない時間」だ。
そんな優越感を吸い込むように、息を吐いた。

吸って、吐いて、吸って、吐いて。

僕らの毎日はあまりにも退屈で窮屈だから、僕はこうやって息をしている。
僕の頭の中だけにある僕だけが知っている時間を使って。
青春
公開:20/12/11 06:08
更新:20/12/29 20:09
宇宙 日常 人生 妄想

花青時雨(カセイ シグレ)

アイコン描きました(/∀≦\)

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