溶けた飴と思い出

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この飴が溶ける間、戻りたい過去を思い浮かべると、そのときの思い出があなたを過去へと連れていってくれるでしょう――。
そんな謳い文句のPOPと飴が目に入る。子供さえ騙されないだろう言葉も、彼と別れたばかりの私を誘うには十分すぎるほど甘く、気づくと私は飴をひとつ手にレジへと向かっていた。
分かってる。こんなのただの気休め。それでも……。私は飴を口に放り込み、目を閉じて彼と出会ったときのことを思い浮かべた。大学に入ったばかりの頃、サークルの勧誘で声をかけてきた彼。

飴が溶け切ったところで目を開けると、そこには私たちが通っていた大学の校舎があった。
「よかったら、うちのサークル見に来ませんか?」
振り返ると優しそうな目をした男性がこちらを見ている。
「すみません。今、人を探してるので」
どことなく懐かしさを感じるその人の誘いを断り、私は誰を探しているのか思い出せないまま、足早にその場を後にした。
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公開:20/12/11 23:50

といとう るん

いのちの、その源に触れた瞬間、人は不思議と懐かしさを感じる気がする。
だって、わたしたちはそこから生まれ、そこへ還ってゆくのだからーー。
そんな思いをベースにのんびりゆったり言葉を紡いでいます。
ブログでは、詩を掲載中。今後は400字以上のショートショートも掲載予定です。
https://ameblo.jp/rune-dialogue/

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