ユカリ

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「いらっしゃい」
 縁結びの御利益があると有名な神社への道すがら、突然聞こえた声とともに、脇道を塞ぐかたちで長テーブルは現れた。『縁』と書かれた貼り紙が揺れ、様々なものが並び、その奥に一人、腕を組んだオジさんがいる。
「オマエさんに縁のある品も混ざってるよ」
「え」私は目の前に展開する何から見ていいかも分からず困惑した。「私に縁のある品?」
 片っぽだけのクツ、ひび割れたコップ、色褪せたタオルケット。中でも婚約指輪と思しきものはキラキラと輝き、目を奪われた。
「その指輪、気に入ったんなら持っていけ」
「いえっ」五円玉を握る手はびっしょり汗をかいていた。「すみません。急いでるので」
「オマエさんに、彼が渡せなかった指輪だ」
 彼って? 喧嘩して音信不通の元カレ? 渡せなかったって? 嫌いになったから? 
「違う。彼は亡くなったんだ。受け取るだけでいい。ユカリは成就すれば成仏できるんだ」
その他
公開:20/12/11 22:09
更新:20/12/11 22:21

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