才能がある女

2
4

 女は苛立っていた。
「もういいは。一人にして」

 画家の女はかつて貧しかった。その日食べるパンを買う金もなかった程だ。そんな金があれば、画材を購入に充ててた。そこに男が現れた。そして彼はすぐに女の才能を見抜き、彼女が欲するモノ全てを与えた。その代わりに女の愛を求めた。
 やがて女の絵は世間に認められ、名声を手に入れる。そして漸く女はある事に気付く。それは女にとって、金で他人にただ与えられるモノは何も必要なかった。女が欲するモノは、自分で手に入れたモノだけだったからだ。

「どうしたんだいハニー?  シャンパンのペリエ割りは君のお気に入りだろ?」と男は震える声で女に聞いた。そんな男を、女は汚いモノでも見るかのような眼でみつめ、男に「一人にしてっていうのが聞こえなかったの?」と叫んだ。男は肩を落とし、黙って部屋を出た。
 翌日、女は真っ白なキャンバスを一枚残して男が与えた部屋を出た。
恋愛
公開:20/12/11 21:00
更新:20/12/11 19:03
#別れ #女の気持ち #画家 #才能を持つ者 #金を持たない者

Azuki Smith( 横浜 )

写真撮影が趣味で、英国文学をはじめとした外国文学が好きな会社員
旅が好きでヨーロッパとアジアを中心に多く国を旅している
また、イギリスに住んでいたこともあり、英国文学に多くの影響を受けている
喋れる言語は日本語 (ネイティブ) > 英語 (アカデミック) >>...>> ドイツ語 (何とか旅が出来るレベル)

投稿内容はその他(主に紀行文)、青春、ホラー、ごく稀に恋愛(でも悲しい物語)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容