サブリミナル波

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大学の実験棟にビルの五階ほどもある超高圧電子顕微鏡を据付けた後、一人の電子顕微鏡製作技師が残って調整に余念がない。高電圧発生源から電子線を投射し、ビーム軸を微かに動かすと異様な波長を感じた。波は装置を透過し外部へと伝わる。技師の身体にも脳にも達する。脳内で音楽を響かせる。サブミリ波だとわかったが彼はサブリミナル波ではないかと疑った。波長に誘われるように大きなタンクの側壁の梯子を登って頂上の蓋を開けて覗く。明るい内側に足を踏み入れる。するすると降りると妙な感じがした。ボルトや部品がいやに大きい。いや、部品が大きいのではなく彼の身体が小さくなったのだ。降りるにつれて彼はどんどん小さく一ミクロンほどにもなり蛍光板を抜けて撮像板に到達し、撮像素子にするりと入った。
撮像素子のなかにはテストで使った部品や工具が転がっている。手持ち無沙汰な技師は周りの部品を集めて小さな電子顕微鏡を作り始めた。
その他
公開:20/12/11 18:27

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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