探偵ジェイ(後編)

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「嘘はいけませんね」
事務所に戻ってきた掛巣は開口一番、そう言った。
「嘘?」
「スーツとウィッグは目撃されたと心配してのことですね。着ていた服はその紙袋ですか」
「何の事です」
「森川美来さんに会ってきました」
貴子の目の色が変わる。
「生きていたのですね」
「事件性があるので詳しく話せませんが、横断歩道橋から落ちた時に足を骨折しましたが命に別状はないそうですよ。彼女はあなたと同じ赤い髪をしていました。あなたの方が真似たとのことですが?」
貴子はウィッグに手をやる。
「生存と居場所を確認してどうするのです」
「生きていたーー」
マスクから漏れた声は安堵と絶望どちらなのか。
「警察に出頭することをお勧めしますが」
「・・・・・・」
貴子はお礼を言い出て行った。
「いいんですか?」
「ああ」
「違います、代金!」
「ああ!」
掛巣は慌てて追いかけて行った。
ミステリー・推理
公開:20/12/09 23:50
後編 ひとまず終わり

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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