君はクロール

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君のクロールを覚えている。

息継ぎなんてしない。25メートルを、ただひたすら往復する。いけるところまでいく。

体力が尽きたら、立ち止まる。肩で大きく息を吐く。

君の生き方は、プールから上がっても変わらなかった。

脇目なんて振らない。何をするにも一途。こうと決めたら、まっしぐら。

生き急ぐように時間を駆け抜けた。

水しぶきは透明で、光が乱反射していた。

いま、君のクロールは、息苦しい時代になった。

誰にだって愛想よく、要領よく、何よりコスパを第一に考えた生き方が、格好いいと思われる時代になった。

でも、だからこそ。

一度でいいから、君のように泳いでみたい。

君のクロールは、眩しかった。
その他
公開:20/12/09 18:49

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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