オレンジ

街に見えない悪魔が飛び回り、人々を脅かす今。色が欲しい、と思った。気持ちが沈むと景色がどんよりとして見える。心もからだも重くなる。何かできることはないだろうか。そうだ、色彩を取り戻そう。自分の目の前の景色に明るさを取り戻そう！
暗いニュースがそこらじゅうを包む霧みたいに僕らを覆う。先がわからない不安がよけいに、体からダークグレーの霧をぼわぼわと立ち昇らせてしまうのだ。世界は明るい色で満ち溢れているのに。天を仰げば黄金の鏡のような月が輝き、地を見れば銀色の雪が光を反射する。風にのってくる香りで花の存在にハッとする。金色のスープをつくって温まろう。柚子やオレンジやレモンのような陽の色のマフラーと手袋をして散策しよう。霧が晴れた空には虹がみえるよ。霜柱の下には春待つ薄緑色も用意されている。
その後、人々は思い思いに太陽色を身に着けて重苦しい霧と闘い、生き延びた。のちに言うオレンジ革命である。