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右手の指の爪が、通常の三倍くらいのスピードで伸びているらしいことに気づいたのは、朝礼の席で社員を罵倒しているときだった。
わたしは壇上から、社員一人一人を指さしては、こき下ろすのが快感だった。その際、振り回す右手の指先が空気との摩擦によって摩滅するのを防ぐためなのだろう。わたしは気にも留めなかった。
社員の人格否定と恫喝を繰り返すうち、爪が風切音を立て始め、空気抵抗によって右手が振りにくくなってきた。爪は伸びるとこんなに重たいのか、と思った。そして、「この屑がっ!」と怒鳴った矢先、爪が捻じれて激しく痛んだ。
思わず手を止めると、伸びた右手の爪の反対側に、その爪を共有する全裸のわたしがもう一人生えていた。その上、そいつはわたしを指さし、罵詈雑言を浴びせかけてきたのである。
壮絶なディスリバトルが幕を開けた。
社員たちは、突如として現れた社長の裸の尻を、ただ眺めているしかなかった。
わたしは壇上から、社員一人一人を指さしては、こき下ろすのが快感だった。その際、振り回す右手の指先が空気との摩擦によって摩滅するのを防ぐためなのだろう。わたしは気にも留めなかった。
社員の人格否定と恫喝を繰り返すうち、爪が風切音を立て始め、空気抵抗によって右手が振りにくくなってきた。爪は伸びるとこんなに重たいのか、と思った。そして、「この屑がっ!」と怒鳴った矢先、爪が捻じれて激しく痛んだ。
思わず手を止めると、伸びた右手の爪の反対側に、その爪を共有する全裸のわたしがもう一人生えていた。その上、そいつはわたしを指さし、罵詈雑言を浴びせかけてきたのである。
壮絶なディスリバトルが幕を開けた。
社員たちは、突如として現れた社長の裸の尻を、ただ眺めているしかなかった。
その他
公開:20/12/10 19:20
無責任書き出しストック
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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