あらいけない

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引っ込み思案な私は昔から言いたいことをタイミングよく言えずに飲み込んでしまうことが多かった。
どっちなの。はっきりしなさいよ。迫られるような空気が怖かった。
私には瞬発力がなく、人の会話に入ろうとしても隙間を待つ間に話題が変わってしまうことがよくあった。
小学校の体育の時間、大きななわとびをクラスメイトが次々とくぐってゆく中で、私だけは足がふるえて動けずに、ごめんなさいすら言えなかった。
そんな私がタイミングよく話せるようになったのは、30歳を過ぎて挑戦した「あらいけない」選手権での優勝がきっかけだった。
日常生活の様々な場面でふと口を衝いて出る「あらいけない」の美しさや違和感のなさを競い合う大会で、決勝トーナメントの顔ぶれには各界のすご腕たちが揃っていた。
中でもくしゃみしそうでしない状態持続選手権の王者、キープ吉野刈さんとの対戦は壮絶なものだった。
あらいけない。
文字数いっぱいだわ。
公開:20/12/10 11:40

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