気に入らない異世界を歩く

「勇者様、魔王を倒し、平和を…」
　醜い顔の姫が懇願する。「魔王討伐の際には、望みの褒美を与え、ニホンへの帰還を約束します」
　脅迫だ。僕は思った。でも、どうしようもなかった。どうしようもないまま、僕は剣を握り、魔法を学んだ。レベルを上げ、レベルを上げ、レベルを上げ続けた…。

　ついに魔王を倒し、冒険は終わった。
「愛しております、勇者様…さようなら…」
　醜い姫は、醜い顔を歪めて微笑んだ。

　帰れる。
　そう思った瞬間――目の前に、豚のような女がドレスを着て立っていた。
「勇者さ――」無言で、豚姫を斬る。慌てふためく兵士も、女子供も、何もかも斬って捨てた。斬らずにはいられなかった…。


「…帰りたい」
　彷徨い、歩き続け、ふと、落ちていた"塔の模型"を拾う。これは…東京タワー？　いや、そんなわけがない……そんなハズが…こんな、こんなクソみたいな世界が、僕の世界であるハズがない……。