終末アフタヌーンティ

0
2

 私はアフタヌーンティを飲みつつ、ベランダから外の景色を見やった。
 小高い丘の上にあるはずの、この古びた教会堂の前は、今、一面の海と化していた。
 昨日まではまだハッキリと見えていた街が、今や完全に飲み込まれてしまっている。この教会堂まで、今までに誰も来ていないということは、街の人々は海から逃れることができなかったのだろう。
 大地が海底に没し始めたという噂が、教会堂で暮らす私の耳に届いたのが、つい一昨日のこと。
 それから今日までの僅かな間に、噂は現実として私の目の前に広がった。
 私も、今日にはこの教会堂と一緒に、海底に没するのかも知れない。
 だが、怖くはなかった。むしろ、世界の終わりを見届けつつアフタヌーンティを飲めることに、悦びすら感じていた。
 海はもうそこまで来ている。
 だが、このアフタヌーンティを飲み干すくらいの時間はありそうだ。
 その時間を、今は大切にしたいと思う。
SF
公開:20/12/10 07:40
SF 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容