朝の別れ

0
2

 今日もまた、朝がやって来た。
 朝は私たちの逢瀬の終わりを告げる、音なき終幕の鐘のようね。
 アナタは朝の光が訪れれば、その下へ出て生活をするけれど、私にはそれができない。私にとって朝の光は命にも関わるものなのだから。
 でも、ああ、そんなに悲しい顔はしないで。
 やっぱり人と吸血鬼は相いれない、一緒に生きることはできない、なんてくれぐれも思わないで。
 どれだけ朝が長く感じられようと、いずれ、必ず夜は訪れるのだから。もしも優しい闇がこの世界を覆ったなら、またこの橋の上で会いましょう。
 私の冷たい血の中に温もりを確かに感じてくれたアナタと、この橋の上で語らうことができるだけで、私は幸せなのだから。
 その幸せを確かに噛み締めるためにも、今は笑顔で別れましょう。
 さようなら、愛しいアナタ。
 また、次の夜に逢いましょう。
ファンタジー
公開:20/12/08 07:35
現代ファンタジー 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容