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「え?」
なんだか不健康なほどに肌の色が白く痩せ細った小柄な男はまっすぐ腕を伸ばし、立てた人差し指をゆっくりと横に動かした。
「それ以上言わないほう、いい」
「まだ何も言ってませんよ」
来週友人の結婚式があり、僕は祝辞を任されていた。安請負とはこのことで、日が経つに連れ緊張のあまり夜も眠れなくなってしまったのだ。
「とにかくこの薬飲めば、あなた極限まで脱力、タコみたい、虚空漂うことできます」
タコがどっちのことを例えているのかイマイチわからなかったが、効果があるというのならまあどっちでも構わない。僕はその『リラッ薬』とかいうふざけた名前の商品を二万円で購入した。

男の言うように効果はテキメンだった。
動悸は収まり、夜中に目を覚ますことも無くなった。
当日はアドリブでうまくやり、絶賛。
「見違えたよ、どうした」
満足だったが、集合写真に写った僕の姿はまるでタコみたいだった。……海中の方だ。
その他
公開:20/12/08 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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