恋バナ〜2020〜

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「彼の第一印象は、とにかく距離感が上手い人だと思ったんです」私は照れながらも打ち明ける。「安心するんですよね」
 なるほど大事よね、とバイト先の先輩、田中さんは電話越しに共感してくれた。いつの時代も恋バナは娯楽になるから女子は楽しい。
「あと、彼はほんとうに喋らない人なんですけど、私が欲しい言葉はちゃんとくれて——」
 完璧だわ、そう言うレジ打ち名人の田中さんの声から、キラキラした目が浮かぶ。先輩は私よりも惚れやすかった。
 だから私たち二人は揃うと、有名人なら誰某がカッコいいだの、さっきのお客さんがカッコよかっただの言い合っていた。それは休憩時間の暇つぶしとして、お菓子のお供として最高だった。
「今度そのお客さんがきたら目で合図よ!」田中さんは次のバイトが少し楽しみだわ、と笑う。「男は気づいているのかしらね。コロナ禍で、モテる条件も変わったってことに」
その他
公開:20/12/08 02:01
更新:20/12/08 12:21

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