あの人は元気にしていますか?

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 夜空を見上げれば、星たちが瞬いて、アナタが元気でいることを知らせてくれる。
 私は星たちに礼を言うと、そのまま近くの草原に寝そべった。
 大地が草原に蹂躙されてから大分経つ。街は草原に破壊され、人々は散り散りになった。
 植物学者のアナタは、草原を食い止めるために浸食の最前線に行くと言った。私を置いて行くのかと、恨み言を並べたけれど、アナタは聞く耳を持たなかった。
 私はアナタが帰るまで、二人で暮らした街で星読師の仕事を続けようとしたが、ダメだった。一ヶ月前、私の街は草原によって陥落したのだ。
 それから私は、アナタを探す旅に出た。草原の浸食の最前線だと聞かされている街へと、地図を頼りに歩いている。
 全ては、生きているアナタにもう一度会いたいから。会って、私よりも草原を取ったアナタに文句を言ってやりたいから。
 だから、私は毎晩星たちに尋ねる。
 あの人は元気にしていますか、と。
SF
公開:20/12/09 08:23
SF 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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