涙の真贋

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 涙が宝石になる。
 ルビーにペリドット、サファイア、アメジスト……。あらゆる宝石が、涙の形となって私の瞳から溢れでる。
 皆はそんな私を気持ち悪がって、碌に話すらしてくれなかった。家族ですらそうだった。
 人々に疎まれ続けて、私は全てがイヤになり、家を飛び出した。
 そんな私に声をかけてくれたのがアナタだった。アナタは、私の涙が宝石に変わるのを見て商売をしないか、と持ち掛けて来たのだ。
 純粋に商売のためだけに声をかけて来たアナタに、私は好感を持った。関係性がサバサバしていると感じたからだ。
 それから、私はウソ泣きの練習をして、いつでもどこでも涙の宝石を出せるようにした。
 そうやって二〇年近く、私は嘘泣きをして、宝石を出し続けた。
 だからだろうか。今、パートナーであるアナタの死に直面して、自分が流している涙が、その美しい輝きを放つ宝石が、本物なのかどうか、私には判断がつかないのだ。
ファンタジー
公開:20/12/09 08:07
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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