誕生

この国では、飲酒がタブーとされていたが、人々は寄り集まって他国から持ち寄った酒を嗜んだ。
「そこにいるあいつは悪魔さ。酒を飲んだら本来の姿がでるから飲めないんじゃないか」
話も聞かず、冷やかしでシラフの男が彼に酒を渡す。
「ほれ、アルコールなんて入ってないよ」
それをグラスに入れて口をつけ、彼は言った。
「悪魔とは愚かなんだ。試験の合否を聞かれるのは嫌じゃないか？相手が不幸になっても成功したいと思っていないか？」
「何を言ってるのか分からないが、それは愚かな人間なんじゃないかい」
「試してみるか？」
一升瓶を渡すと、男は僅かずつ飲み干した。酩酊していると、先ずは角が生えた。尾が生え、翼が生えた。
「悪魔になるのは、あんたの方だったみたいだね」