0
2

「ねぇ、僕のこと愛しているかい?」
玉ねぎをきざみながら、いつも通り僕は尋ねる。
彼女は小さな声で応えた。
「えぇ、愛しているわ」
返事は決まってこうだ。
2年前彼女とこの部屋で暮らし始めてから、毎日のように繰り返している。
彼女はいつだって変わらぬ愛情を僕に注いでくれた。
僕の就職が決まって大喜びした時も、上司に怒られ涙を流した時も、いつだってそばにいてくれた。

もちろん欠点だってある。
彼女は怠け者だ。
料理も、洗濯も、掃除も、全部僕の仕事だ。
でもいいんだ。彼女のためならいくらだって頑張れる。
彼女を愛しているから。

最近、彼女は笑うことが少なくなった。大学近くのカレー屋さんではじめて会ったときは、あんなに笑いかけてくれたのに。
それでも、ご飯を食べるときだけはいつも笑顔を見してくれる。
だから今日は、彼女の大好きなカレーを作った。

「おまたせ」

僕は彼女の檻を開ける。
その他
公開:20/12/08 14:18
更新:20/12/09 15:08

かさい さとし

1日1話投稿
感想やアドバイスいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容