夕暮れ自動販売機

夕暮れになるとその自動販売機に明かりが灯る。吊るされた赤提灯は仕事帰りのサラリーマンを誘い込む。
お酒とおでん缶、焼き鳥缶を両手に一杯ひっかけていく。
その姿はまるで立ち飲み居酒屋のよう。しかしここにはテーブルもない。長居は無用と適度に飲むと家に帰る。
夕暮れ自動販売機と呼ばれるそれは夕暮れから深夜にかけて稼働している。
夜更けには〆のラーメンを求めてやって来る人もいる。
勿論、水や白湯も売っているので酔い醒ましに是非どうぞ。

宵が覚めてくると赤提灯が色を変える。
売っている物が一新される。先程まで飲み屋関係の物が入っていたかと思えば、今度は朝取れ新鮮野菜に鮮魚と来た。
お得にいい品を求め主婦が自動販売機に列を成す。
色を変えた提灯は夕暮れ自動販売機が日の出自動販売機へと変わった証拠だ。
市場のような自動販売機は売り切れ御免である。

そんな理由でこの自動販売機は昼間に稼働していない。