愛の勝利

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 愛というものが死を乗り越える特権的な地位を有しているのなら、私がトムにしたことは、決して穢れても、ましてや犯罪でもない。
 私はトムを、トム・ルーウィンを愛していた。だが、彼は私の元から去って行った。流行病という詐欺師が、私の前からトムを永久に手の届かない場所まで連れ去ったのだ。
 けれども、本当に届かないのだろうか? 私はそう考えた。
 この世界にある科学と魔法の力を駆使すれば、トムを、あの詐欺師の手から救い出すことができるのじゃないかしら? 私はそう考えた。
 流行病で黒くなったトムの器を、私は他人の肌で綺麗にした。六人分必要だったけど、上手くやりおおせた。
 後は簡単。内臓を取り出し、保存魔法をかけ、綺麗に縫い合わせて、目玉をガラス細工に変えて。そうしたら彼は息を吹き返した。
 私は愛の力で、詐欺師に勝ったのだ。
 愛の勝利。私のしたことはただ、それだけ。
ファンタジー
公開:20/12/06 14:13
ダークファンタジー 『ダークファンタジア』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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