妖精族の娘

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 その日、姫宮さんは、ダンセイニ卿の「妖精族の娘」について不満を漏らした。
「あんなにフワフワしてないよぉ。妖精族の世界だって、あの頃からもっとハードだったんだから」
 大学の近くを流れる小川の岸辺に腰かけて、姫宮さんはプクゥッと頬を膨らませる。
 雪のように白い肌、モフモフッとした獣系の耳に、背中からは青く透き通った羽が生えている。普段は魔法で隠しているけれど、私と二人きりの時は、元の姿に戻るのだ。
 もっとも、パーカーにジーンズという大学へ行く際の格好なので、元の姿に戻るとちょっと違和感はあるけれど、それは言わない。羽の生えた大学生がいたって、別に問題はないのだし。
「まあまあ、あれはフィクションなんだしさ」
「そうだけど。あんまり現実と離れてるとさ、何だかなぁって思うのよ」
 姫宮さんはそう言って、妖精族の娘らしからぬ、何とも深い溜息を吐くのだった。
ファンタジー
公開:20/12/06 08:15
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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