正解

勉強は、とても楽だった。
正解を選べばいいだけ。
正解を導き出せばいいだけ。
人間関係は、とても難しい。
何を言えば正解なのかわからない。
どう反応すれば正解なのかわからない。
だから、私は勉強に逃げた。
人間関係を除けば、学校はとても楽だった。
授業に出て、勉強して、テストを受けて、教師の望む優等生でいれば、それだけで上手くいった。だから、それが正解。

「なぁ、サボろうぜ。次の授業」
「は」
「次の歴史、じいちゃん先生だから大丈夫だって！」
このクラスメイトは、何を言ってるんだろう。そんなの、間違いだ。正しくない。
「いつも勉強ばっかじゃん。たまには息抜きだよ！」
そのまま彼は、私の手を引いて教室を飛び出す。予鈴が鳴った。戻らないと。こんなの、間違ってるのに。
でも。
(…ちょっとだけドキドキしてるのは、何でだろう)

その日初めて、私は間違いを選んで。
私は学校生活を楽しいと思った。