近眼結婚

近眼同士の見合い。どちらも、超がつく近眼。どんなに分厚い眼鏡をしても目の前の人の顔がよく見えない。お互い過去の見合いは失敗。相手の容姿がよく見えないから心が入らなかった。

今回の見合いは互いに超近眼と知っている。だからどれだけ相手を凝視しても失礼にはならない。
見合い当日、席に着いた二人はさっそく目を凝らして相手を見る。が、よく見えない。両家に緊張が走る。
二人の間のテーブルが大きいせいかも。二人は身を乗り出す。が、まだよく見えない。
片手、両手とテーブルに乗る。ついには片足、両足と。それでも、まだよく見えない。

二人は卓上を這って進む。
両家の両親は顔を手で覆っている。とんでもない粗相、これはご破断だろう、と。
それでも、にじり寄る二人。
まだよく見えない。
もうお互いの息が掛かるほど近い。
でも、まだ。にじり寄る。
鼻と鼻がくっつく。
もう少し。
にじり寄る。
キッス。
近眼結婚。