いい子のもとに来たサンタ

「サンタはいい子のところへ来るのよ」

幼稚園の先生が、私にそう話してくれた。

だから私はいい子にする。

ご飯がなくても、

「ごはんまだ？」

と言わない。

服が数着しかなくても、

「新しい服買って」

と言わない。

運動会にお母さんが来なくても、

「来て」と言わない。

お母さんの彼氏が家に来て

追い出されても、

「家に入れて」と言わない。

「だからサンタさん、早くきて」

少女は雪が降る夜空に向かって言った。

気がつくと少女の目の前に

優しそうな顔をしたおじいさんが立っていた。

もしかしてサンタさん？

少女は口を開いた。

「サンタさん、お願いです。優しいお母さんを

ください！」

少女は真冬の夜に玄関前で震えているところを

児童相談所の職員によって救われた。

後日、少女の実母は児童虐待で逮捕され、

少女は優しい夫婦のもとに養女に出された。