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ベランダへ出た。アキメク。Tシャツでは心細いと羽織った、カラシ色のカーディガン。毛羽立った首元から箪笥の匂い。
茜色の中へ……。染まるよ。
秋のベランダへと繰り出すきっかけをくれた煙が漂い溶ける。いつかの空き缶を灰皿に変えて。ひんやりとした風が頬を撫でる。目にかかる前髪を掻き分けた。柵にもたれる。
もう直ぐ彼が帰って来る。いつからか彼とは会えなくなっていた。それも仕方ない。好きになった人に恋人が居ただけ。ただ、それだけ。
垂れ下がる電線の向こう、橋を渡る電車が突き抜けた。軋む車両と、揺れる音。残された一瞬の静寂。
まだ始まってすらない。これからの私達ならやっていけるだろう。大丈夫、彼は私のもとへ帰ってくる。
鍵が差し込まれ、ドアの開く乾いた音。ほら帰って来てくれた。
「ただいま」
「おかえり」
「えっ?」
「帰って来てくれたね」
「ここ、彼女のアパートだぞ?」
茜色の中へ……。染まるよ。
秋のベランダへと繰り出すきっかけをくれた煙が漂い溶ける。いつかの空き缶を灰皿に変えて。ひんやりとした風が頬を撫でる。目にかかる前髪を掻き分けた。柵にもたれる。
もう直ぐ彼が帰って来る。いつからか彼とは会えなくなっていた。それも仕方ない。好きになった人に恋人が居ただけ。ただ、それだけ。
垂れ下がる電線の向こう、橋を渡る電車が突き抜けた。軋む車両と、揺れる音。残された一瞬の静寂。
まだ始まってすらない。これからの私達ならやっていけるだろう。大丈夫、彼は私のもとへ帰ってくる。
鍵が差し込まれ、ドアの開く乾いた音。ほら帰って来てくれた。
「ただいま」
「おかえり」
「えっ?」
「帰って来てくれたね」
「ここ、彼女のアパートだぞ?」
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公開:20/12/05 13:16
更新:20/12/05 13:17
更新:20/12/05 13:17
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NOVEL DAYSにて執筆中
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