ある朝の雨と僕

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寒々しい空の下、さらさらと細かい雨が降り落ちてくる。
土曜日だが、私立高校に通う僕たちは今日も登校する。公立の連中がずっと羨ましかった。

でも、もうすぐ受験で、卒業だ。一日の重みは嫌でも増す。早く終わって欲しいという気持ちと、大切にしていたいような時間が溶けずに混ざり合い、心と頭をグルグルさせる。

最近晴れの日が多かったし、早朝だけの雨予報に敏感に反応した人間は多くない。駅から出てぞろぞろと歩く生徒たちは頭を垂れて目を細め、天候の急変を呪いながら、あるいは苦笑しながら足速に進んでいく。

そこに彼女もいた。今日は珍しく、一人でいる。
「入る?」
声をかけて傘を差し出す。そんなことができたらどんなにいいだろう。

でも役目を望まれているのは彼女がマネージャーを務める野球部のエース・キャプテンで、万年初戦敗退のバスケ部ベンチウォーマーではないはずだ。

僕はすうっと、彼女の横を歩き過ぎる。
青春
公開:20/12/06 07:00
更新:20/12/05 23:47

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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