田んぼの街

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 久しぶりに実家に帰ると、街全体が田んぼになっていた。
 言葉の綾でも何でもない。道路も、ビルも、家も、電柱までもが耕されて、そこに稲が植え付けられていたのだ。
 青々とした稲が、至るところに生えている光景は、さながら、終末世界のような不穏さと美しさを兼ね備えていた。
 駅から街に降り立ってしばらくしてから、人が全く歩いていないことに気が付いた。
 今日は日曜日、時刻は正午を少し過ぎたところだ。普通なら、お年寄りや高校生なんかがフラフラと歩いていてもおかしくはないのだが、誰もいない。
 道路にも、車の姿が全く見えない。
 ただ、青々とした稲が静かに風に揺られているだけだ。
 試しに実家に電話をかけてみたが、何度コールしても誰も出ない。
 何かマズいことが起きているのか。
 そう思って、ふと足下を見ると、私のスニーカーの爪先がいつの間にか耕されて、稲が植え付けられていた。
ファンタジー
公開:20/12/05 08:12
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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