福笑い

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「一回り違う年男と年女か。俺は今年でもう三十六だ。加奈、本当に俺でいいの?」

 手前で信号が赤になる。徐々にスピードが落ちてゆくのを感じつつ、私は運転席にからだを向け、やっと合った視線に想いを結ぶ。

「私はあなたが好き。結婚したい。ね、今日もこれからその意も含めての挨拶にいってくれるんでしょ?」元日のみ家族が揃うようなそんな家の人らを大切にしてくれる彼はいつだって誠実だ。「あ、青!」

 両親は働き詰めで、私が高校入学時に三つ年上の姉は家を出たことも既に伝えていた。

「俺ん家もさ、いや、俺は何年も弟と顔を合わせてないか」私が返答に困った数秒間、沈黙になる。「加奈、愛してる。これからは、お互いにお互いの家族も大切にしていこう」

 その後、ノンストップで私の実家に着いたが、驚いた。

「加奈をおねえさんって呼ぶ日が来るとは」

 父母姉妹、兄弟が笑った。初笑いだった。
その他
公開:20/12/04 22:47

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