女は女優

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 アカイアオイは、私のカレシである太一の前でぽろぽろ涙を流したと言う。

「どうせうそ泣きでしょ」

 聞けばその女は女優を夢見てこの春上京してきたらしく、太一の人が好いところにつけ込み、新居までの正しい道筋に加えて彼の連絡先をゲットし、終いにはカノジョがいる男の心までもを奪った恐ろしい人間だ。

「百恵はうそでも泣かないもんな。強いわ」

「馬鹿みたい。騙されてるんだよ、太一は。演技! 演技に決まってるでしょ」

「百恵はアオイを知らないからわからないんだよ」太一はすっかりアカイアオイのファンだった。彼が躊躇なく口にするその名前すら本物かどうか怪しいものなのに。「アオイには俺がいないとダメなんだってさ」

「——そう。わかった。じゃ、私達別れましょう」私には自信があった。「でもね、アカイアオイは名女優だよ。近い将来絶対に売れる。そして、太一は捨てられる。それがオチ」
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公開:20/12/04 22:00

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