夕暮れ自動販売機

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入社したばかりの頃、私は何でも出来ると思いこんでいた。それは大きな間違いだった。
失敗の連続に涙が出てくる。山のような仕事に今日も残業だ。
ん?山のようにあった仕事が半分以上減っている?どういうことだ?
「ボケっとすんな。とっとと仕事片付けろ」
先輩の声に背筋を伸ばし、次の書類を手にする。
ん?先輩って今日定時上がりのはず…何で?
またも呆然とする私に先輩は「珈琲でも飲んでこい」と言うものだから気分転換に自販機へと向かう。
そこで『夕暮れ限定・苦労珈琲』を見つけた。苦い…ブラックだ。
「若い時分、苦労は買ってでもするものだ。俺はまだまだ若い。だからお前の残業を買った」
戻ってきた私に先輩が言った。
「いいか。失敗ってのは誰だってする。そんな時は先輩に迷惑かけろ。苦労を買わせろ。そしていつか、お前に部下が出来た時、お前も部下の苦労を買ってやれ」
何でも出来る先輩はそう言って苦笑いを浮かべた。
公開:20/12/05 20:36

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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