同居したくない妻

キッチンのテーブルでお茶を飲んでいた夫婦。

夫が切り出した。

「ねえ、母さんも年だし、一緒に暮らそうよ」

妻の顔が曇る。

「嫌よ、あんな人と同居なんて嫌」

「母さんも父さんを亡くしてから一人暮らしで

寂しいだろうよ」

「それでも嫌。あの人と私は気が合わないの」

「そんなこと言わずにさ～」

「嫌なものは嫌」

妻はテーブルから立ち上がると、流しで

カップと皿を洗いはじめた。

ピカピカになった皿を見て、妻は言う。

「あの人はお皿をロクに洗うことも

できないのよ。いつも汚れが残ったまま」

夫はははっと笑う。

「確かにそうだな」

妻はため息をついた。

「私はあの人のそんなところが小さな

ころから嫌だった。だからもう一緒に

暮らしたくないの」