廃人数学者
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銀行の受付窓口に一人の数学者がやって来た。
ブルブルと震えた指で受付番号の書かれた紙を差し出す。
「お願いします」
「あ、お客様の番号は220番ですね。今219番のお客様をお呼びしていますので、もう少しお待ち頂けますか?」
「いいえ。219を四捨五入したら220です。つまり…私の予想が正しければ、実質的に220番と見做すこともできるのでは?」
「ええと…」
「何かここまでの流れで私の論理に矛盾がありますか?」
窓口の行員は顎に手を当ててしばし考えた。
「219に1を足すと220になりますよね」
「はい。間違いありません」
「また220から1を引くと219になりますね」
「はい。間違いありません」
「では、私の論理に何か矛盾はありましたか?」
「いいえ」
「では席でお待ち頂けますか?」
「…わかりました」
数学者はギョロリとした目を泳がせて背を向けると、亡霊のように待合所に歩き去っていった。
ブルブルと震えた指で受付番号の書かれた紙を差し出す。
「お願いします」
「あ、お客様の番号は220番ですね。今219番のお客様をお呼びしていますので、もう少しお待ち頂けますか?」
「いいえ。219を四捨五入したら220です。つまり…私の予想が正しければ、実質的に220番と見做すこともできるのでは?」
「ええと…」
「何かここまでの流れで私の論理に矛盾がありますか?」
窓口の行員は顎に手を当ててしばし考えた。
「219に1を足すと220になりますよね」
「はい。間違いありません」
「また220から1を引くと219になりますね」
「はい。間違いありません」
「では、私の論理に何か矛盾はありましたか?」
「いいえ」
「では席でお待ち頂けますか?」
「…わかりました」
数学者はギョロリとした目を泳がせて背を向けると、亡霊のように待合所に歩き去っていった。
その他
公開:20/12/03 11:34
更新:20/12/03 11:35
更新:20/12/03 11:35
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
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