300年後のお正月

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「あけましておめでとう。今年も無事お正月に集まれてよかった」
家族団らんの食卓には立派な餅鏡が鎮座している。
「おばあちゃん。これなあに?」孫が聞いた。
台上に丸餅を二段重ねた形の鏡が置いてある。
「これはね昔からお正月にお飾りするの。みんなの健康を祈る意味があるの」
「我が家の餅鏡は立派だよな。親父が若い頃買った代物だろ。100年物らしいぜ」
そうねと母親は遺影ディスプレイに父親を投影した。
「さ、みんないらっしゃい。これがお目当てでしょ」孫達がワッと浮足立つ。
孫たちの掌の上に丸い焼き菓子が落とされる。
「お、母さんの玉落とし。絶品だからなぁ。俺も貰おうかな」
「大人の分はありませんよ」
「兄さん。そのやりとり去年も言ってたよ」笑い声が響く。
「さて、やるか!上げ蛸」
息子は紐を括り付けたゆでダコを持って孫達と外に出ていった。
母親はお茶をすする。
「本当に変わらないって大事なことね」
その他
公開:20/12/03 10:24

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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