鏡よ鏡

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「鏡よ鏡、世界で一番美しい人は誰?」良子は鏡にきいた。
すると鏡が答えた。「それは良子様です」
これはグリム社から発売されたAI実装の鏡だ。鏡の前に立つと鏡がおべっかを使うのである。お世辞と分かっていても悪い気はしない。
褒めるだけではない。人生相談にも乗ってくれるようだ。親身になって困りごとを聞いてくれ的確なアドバイスをくれる。
鏡にはセンサーもついていて、顔色や心拍数を分析して健康状態の測定までする。
良子は様々な機能を試してみて夢中になった。
「未来が来たって感じ。これはいいわね」
玄関のベルが鳴った。ドアを開けると男が立っている。
「良子さんですね。話を伺いたいのですが」男は警察手帳を見せた。
「どうしてここが……」
実は良子は凶悪事件を起こして逃亡中だったのだ。
「知らなかったんですね。あなたの使った鏡には顔認識ソフトが内蔵されていて、指名手配犯を見つけると通報するんですよ……」
SF
公開:20/12/03 08:34

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