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 ある朝、沢木さんが家の外に出ると、道に巨大な亀がうずくまっていた。
 それは実に大きな亀で、道路を完全に塞いでしまっていた。これでは、最寄り駅に行けないと沢木さんは思ったのだが、亀はジィッと彼女のことを見ている。
 それが何だか不気味で、沢木さんは遠回りして最寄り駅へ向かおうと、亀とは反対側に向けて歩き出そうとした。
 その時、前方から自転車に乗ったお婆さんが、やって来た。お婆さんはそのまま、例の巨大亀の方へと向かっていく。
 ああ! ぶつかる!
 そう思いながら見ていると、なんと自転車は亀をすり抜けてしまった。同時に、亀の形もぼやけて、まるで霧か何かのように消えてしまったのだそうだ。
 それ以来、沢木さんは亀を見ていないのだが、あの時、お婆さんが亀の手前でリンリン、とベルを鳴らしたのが、いまだに気になっているそうだ。
ホラー
公開:20/12/03 08:02
怪談 『刹那怪談』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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