振り向かない化け物

2
1

「そいつはいつの間にか前にいるんだ」

太助は言った。
その日、村人たちは古寺に集まって怪談を聞いていた。
村で噂の振り向かない化け物の話。それに出会って、真っ赤な目を観てしまうと死んでしまうという。

「でも、振り向かないんだろ?だったら目が合うこともねぇな」

村人の1人がそう言った。太助は振り向いて自分の背中を指差した。

「そうさ、だから背中を見てれば良いんだ」

村人は安心する。しかし太助の話は終わらなかった。

「ところがだ。ゴキッ!て音が鳴ったら要注意!そいつの顔が後ろに倒れてな、後頭部が背中にくっついちまう。そうなると終わりだ。どうしたって目が合うのさ」

村人たちは悲鳴をあげる。その1人が言う。

「だったら俺は目をつむるよ!」

太助はニヤリと笑った。

「それが見ちまうもんなのさ」

ゴキッ!

太助の首から凄まじい音が鳴ると、顔はゆっくりとそのまま後ろに倒れこんだ。
ホラー
公開:20/12/03 06:35

福田天太郎

はじめまして。プロフィールを見てくれてありがとうございます。とっても嬉しいです。

ジャンルは濃い恋愛以外はなんでも書きます。
ショートショートも大好きです。やはり源流は星新一先生ですね。


カクヨムでハイジの続きとか小説書いてます。こちらもよろしくお願いします。

 @hukudahappy
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容