走光性人間

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「あのひと、大きな声で言えないけれど陰気だよね?」
「きっと負の走光性人間よ」
「それって何なの?」
「蛾やハエのように光がある方へ近づくような行動は『正の走光性』、蚊やゴキブリのように光から遠ざかるような行動は『負の走光性』というんだけれど、あれと似た習性の人間のことよ」
「そうなの。それじゃあ、いつも陽気で明るいひとは正の走光性人間ってこと?」
「そうね。オーラやカリスマ性があって、きらきら輝いているひとも間違いないわ」
「陰のあるひとはどうかな?」
「表面に出てこない暗い面のあるひとのことだから、一概に負の走光性人間とは限らないわ。謎めいた雰囲気で隠れた魅力があったりするから」
「確かにそういわれてみれば」
「ただ、正の走光性人間のように見えても気をつけないといけないひとがいるわ。例えば、陰険な性格のひと。陰で悪口を言っていたり、陰で糸を引いていたりするわ」
「それは要注意人物ね」
その他
公開:20/12/04 20:00
陰気 走光性 ハエ ゴキブリ 習性 陽気

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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