日常のノート(雪虫)

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最初はあれだと思った。大群で、うっかりその中に突っ込んでしまうと、息を止めて通りすぎなくてはいけないあの虫。ユスリカだっけ。

だけどそれにしてはフワフワ飛んでいるし、何より…青い。

気付けば私より一回りほど年下の子が、手で何か掬うような仕草をしていた。何してるの?と聞いたら、雪虫を掬っているのだと言った。

これ、雪虫って名前なんだ。彼が掬った虫を見てみると、青くて触覚や顔があり、しかし体は白くて綿毛みたいだった。

彼がやったみたいに、飛んでいる雪虫を下からそうっと掬った。雪虫は手に乗って動かなくなった。

十分に観察し、その美しさを今まで知らなかったこと、そしてこの小さな彼のお陰で知れたことに高揚した。

しかし雪虫は私の手の中から飛び立っていくことはなかった。

あとで調べたら、雪虫は何かにぶつかるとそのまま死ぬのだそうだ。本当儚い雪のような生き物。悪いことをしてしまった。
公開:20/12/03 23:35

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

104.がおー

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