フテキセツ

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「なんだあれは!」
「フテキセツ! フ、フテキセツだ!」

ビルの屋上に、その人物は突如、現れた。彼あるいは彼女がいったいどういう人物でいまそこで何をしているのかをここで深く語ることはフテキセツなので差し控えさせていただく。ただ端的に言って、彼もしくは彼女は詰まるところフテキセツなのだ。非常に、まったく、惜しげもなく、完全に。

「なんてフテキセツな……」
「フテキセツ過ぎてワロタ」
「あんなフテキセツな状態を放置しているなんて、責任者もフテキセツだわ」

人々は口々に彼または彼女を指差し非難の言葉を浴びせる。

そうした善良なる人々の好意的指摘も虚しく、フテキセツな彼ないし彼女はフテキセツな笑みを浮かべ、フテキセツな場所でフテキセツな格好をし、フテキセツな時間帯にフテキセツな行為をし続けている。

野次馬たちの怒りは燃え上がらんばかりだが、誰もまだテキセツな解決手段を見出せないでいた。
その他
公開:21/02/11 22:00
更新:21/02/11 21:53

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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