雪坊主

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豪雪地帯のこの田舎では、粉雪や牡丹雪などに混じって雪坊主が降ってくる。
雪坊主は小人で、てるてる坊主に似ている。大地に舞い降りると、雪坊主同士で遊び始める。それを見かけた者には、人気がないのに大地の上を雪が行ったり来たりして雪合戦をしている光景に映る。雪坊主がきゃっきゃっと嬉しそうに騒ぐ声も聞こえるらしいけれど、深々と降り積もる雪に、その音は掻き消されてしまう。
この田舎では、雪だるまを神様として祀る神社があったり、雪地蔵がお堂に並んでいたり、この時期に雪祭りを催したりするのは、雪坊主が現れるためと昔から伝承されている。
雪坊主は、雪が降り止んで大地に積もった雪が解けてしまうと、一緒に消えていなくなる。けれども、いくつかの雪坊主は、人間の子供に化けて雪ん子になったり座敷童子になって、里の民家にこっそり忍び込んだりする。
今も耳を澄ましてごらん。この部屋で雪坊主の楽しそうな笑い声が聞こえる。
ファンタジー
公開:21/02/13 07:01
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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