カレーの屈辱

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「辛さが足りないなぁ。僕はもっと辛くてスパイシーなカレーが好きなんだ。……残念だけど」
 ヨウイチは、そう言いながらミズエの作ったカレーを二口食べたところで手を止めて、スプーンを皿の端にそっと置いてしまった。ミズエは落胆した。どんなカレーが好きか彼に聞いて作った。自分ではうまく出来たと思った。それに、食べるのをやめるほど不味くは無いハズだ。それがカレーというものだ。
 ミズエは彼に喜んでもらいたくて愛情込めてカレーを作った。だからこのカレーにはただならぬ思いがこもっていた。ミズエの耳にどこからか「私を残すなんて許せん!もう一度食べるよう男に言え!」という声が聞こえてきた。そこで彼女はヨウイチに「もう一口食べて見て」と懇願したので、彼は今一度スプーンを取った。
「あれ?イイ辛さだ。おいしくなってるよ!」彼は一気にカレーを食べた。
 カレーは残された屈辱に燃え上がり、辛さを増していたのだ。
その他
公開:21/02/13 05:54
更新:21/05/23 22:13
#ショートショート #超短編小説 #カレー

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
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