手乗りみかん

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一家団欒。こたつを囲んでテレビを見ている。誰ともなく立ち上がり、みかんを抱えて戻ってきた。
「今年のみかんは質がいいねえ」
弾けんばかりのビタミンCと甘さがぷりっぷりに詰まったこぶりなみかんだ。太陽の光と愛情をたっぷり受けて育ったに違いなかった。
その証拠に、とても人懐っこい。
こたつの上に並べられたみかんたちは周りを見回していたが、手近な人を見つけるとその手のひらにくっついた。丁寧に扱われてきたのだろう。人の手を恐れていない。
「ひんやりすべすべー」
娘がみかんをほっぺにくっつけて、感触を楽しんでいる。その後、おもむろに皮を剥いて実を食し始めた。みかんは一切抵抗しなかった。
「皮は動かないんだね」
皮を見つめて息子と娘が話してる。
「服と一緒なんだよ、きっと」
「じゃあ置き土産なんだね」
二人の案で、今日はみかん風呂になった。爽やかさと瑞々しさに包まれながら、みかんに思いを馳せた。
その他
公開:21/02/12 23:49
1日1話 みかん大好き 渾身の『なんだこれ』

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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