お土産の人形

彼女と訪れたその場所は山奥の村でどう考えても旅行に訪れるような場所ではなかった。
でも彼女はどうしてもここに来たかったと言う。パワースポットでもあるのか？
彼女はお土産屋を見つけると車を停める。嬉しそうに腕のない人形を購入していた。
「これ買う為に来たんだよ」
その不気味な人形のどこがいいんだ？
「この人形、腕がないでしょ？腕がないって事は子供が抱けないの。子供をおろしても罪の意識に苛まれないの」
…
「私達、子供も結婚もまだ早いと思うんだよね。もう少し遊びたいじゃん？」
俺は彼女と結婚するつもりでいた。子供が出来たのなら、責任を取るつもりでいた。
でもコイツは…

その日は村の宿に泊まった。
翌日、俺は一人車を走らせる。元彼女はこの村に置いていく。
足のない人形をアイツに渡したらアイツはこの村から出られなくなった。
ふと窓の外を見ると子供はおらず、暗い目をした大人の姿ばかりが目についた。