エッグ

「ねぇ、ドンプトンさん」
「なんだい、ミス・グレイ」
「噂で聞いたのだけど、あなたの奥さん、凄く卵を育てるがうまいって」
　ドンプトンは嬉しそうに笑った。
「えぇ、えぇ、そうですよ。彼女は天性の温もりで――そうとしか表現できないな――鶏もタラも、どんな生物の卵も孵化させることができるんですよ」
「素晴らしい力ね！」
　しかし、ドンプトンは複雑な表情をした。
「何かあるの？」
「すぐにわかるさ」
　
　奥さんが申し訳なさそうな顔をして部屋に入ってきた。
「グレイさん、ごめんなさい。私、朝食に卵料理をお出ししようとしたのだけど……」
　奥さんは料理を二人に見せる。
「肉料理になってしまいました」
　グレイは感嘆の叫び声を上げた。
「あら！　なんて食べ応えのありそうな卵なこと！」