時動販売機

「時動、販売機…？」

実家がある岡山の小さな町は、駅前すら閑散としてどこか湿っぽい空気が漂っている。
不慮の事故で死んだ父の遺品整理のため週末召集された私と弟家族は、膨大な骨董品の仕分けに手間取り1日に数本来る電車を逃し明日の始発で帰ることになった。

作業がひと段落し喉が渇いた私は近所の自販機まで来たわけだが、見慣れていたはずのソレはいつからか“時動販売機”と印字され「あぁ～ら不思議、過去も未来も一飛び」という単調な収録音声とともに異彩を放つモノへと変貌していた。
陳列棚には中心の列ど真ん中に赤字で「カコ」、青字で「ミライ」と書かれた2本のスチール缶だけが並び100円と表示されている。

面白い。

私は喉の渇きなど忘れ好奇心の赴くままに小銭を投入、でも何だか右下のほうのボタンが気になってプッシュすると取出し口から普通にコーラが出てきた。がぶ飲みして帰った。やっぱコーラってうめぇわ。